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10.定型業務とは?非定型業務やプロジェクトとの違いと、効率化のポイント
企業活動において発生する業務の多くは、「定型業務(ルーチンワーク)」と「非定型業務(イレギュラーな業務)」に大別されます。前者は毎日・毎週・毎月など、一定のサイクルで繰り返される作業を指し、後者は都度新たな対応や判断が必要になる作業です。さらに、一定期間内に目標を達成するために運営される「プロジェクト業務」もあり、これらを適切に区別し、効率化することで組織全体の生産性を大幅に底上げすることが可能です。
これまで本シリーズでは、業務一覧表や作業手順書、マニュアル整備、平準化、ナレッジマネジメント、マネジメントサイクルなど、多岐にわたる業務改善手法を取り上げてきました。今回取り上げる「定型業務」と「非定型業務」の違いや、それぞれの効率化・最適化ポイントを理解すると、前回までに学んだ手法をさらに有効活用できます。中小企業では、属人化しがちな反復作業を自動化・標準化し、創造性が求められる作業へ人材をシフトさせることが競争力強化の近道です。
本記事では、定型業務・非定型業務・プロジェクト業務 の特徴を整理するとともに、各形態ごとの効率化ポイントを解説します。具体的な事例やツール導入のヒントも交えながら、貴社の業務フロー見直しと最適化に役立つ視点を提供しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
- 定型業務と非定型業務、プロジェクト業務の違いとは?
- 定型業務の効率化|自動化と標準化のポイント
- 非定型業務における創造性と柔軟性の管理手法
- プロジェクト業務の進め方|特徴と成功の秘訣
- 成功事例|定型・非定型・プロジェクトを使い分けた改善例
- まとめ
- 補足コンテンツ(テンプレート・チェックリスト)
(このサイトでは、中小企業が業務プロセスの最適化を実践し、持続的な成長を実現するための総合的な情報を提供しています。全体像や関連する記事は「業務プロセス最適化ガイド|全15ステップで基礎から応用まで」でご覧いただけます。)
1. 定型業務と非定型業務、プロジェクト業務の違いとは?
まずは、それぞれの業務形態の違いを明確にしておきましょう。業務を大きく3つのカテゴリに分けると、最適な管理手法や効率化の方向性が見えやすくなります。
(1) 定型業務(ルーチンワーク)
- 特徴:
- 一定のサイクル(毎日・週次・月次など)で繰り返される作業
- 手順がある程度決まっており、作業者が変わっても同じアウトプットが求められる
- 例:経理部門の支払処理、給与計算、在庫確認、定期レポート作成など
- 目的:
- 安定した品質とスピードを確保する
- ミスや二重入力などのムダを排除してコスト・時間を削減
- 作業手順書やマニュアル整備、自動化ツール導入が効果的
(2) 非定型業務
- 特徴:
- 発生頻度やタイミングが不定で、作業内容も都度変わりやすい
- 創造性や判断力、経験知が求められるケースが多い
- 例:新規顧客への提案書作成、トラブル対応、イレギュラーなクレーム処理など
- 目的:
- シチュエーションに応じた柔軟な対応・意思決定を行う
- 必要な情報を素早く集め、ベストな判断を下す
- 固定フロー化しづらい領域だが、ナレッジマネジメントやマニュアル活用でリスクを低減
(3) プロジェクト業務
- 特徴:
- 特定の目標・期間・スコープを持ち、完了期限が設定される仕事
- 成果物を達成したらプロジェクトは終了し、再度同じ形で繰り返されるわけではない
- 例:新商品の開発プロジェクト、システム導入プロジェクト、店舗リニューアルプロジェクトなど
- 目的:
- 期限内に合意された目標を達成する
- チーム編成、予算、リスク管理、進捗管理などが重要
- プロジェクトマネジメント手法(WBS作成、タスク管理ツールなど)が有効
業務一覧表を作成した際、各作業を 「定型業務」「非定型業務」「プロジェクト業務」 のいずれかに分類すると、管理と効率化の方向性がより明確になるでしょう。
業務分類テンプレート
2. 定型業務の効率化|自動化と標準化のポイント
定型業務は、毎回同じ(あるいは非常に類似した)内容の作業を繰り返すため、「標準化」「自動化」 といったアプローチとの相性が非常に良いのが特徴です。ここでは、主な効率化の視点を整理します。
(1) RPA(Robotic Process Automation)やシステム導入
- 対象業務例:
- 紙ベースのデータ入力作業
- Excelでの集計・転記作業
- Webシステムからの定期的な情報取得・更新
- 導入効果:
- 人手によるミスを減らす
- 大幅な時間短縮(10時間→数分など)
- 担当者が付加価値の高い業務に注力できる
中小企業でも、比較的低コストで導入できるRPAツール(UiPath、WinActorなど)や、SaaS型サービスが増えているため、簡単なレポート作成やデータ入力程度なら導入ハードルが下がっています。ただし、導入前に「そもそもその業務工程が本当に必要か?」を検証し、不要なステップを省くリストラも並行して行うのがベストです。
(2) 作業手順書・マニュアル整備
定型業務は手順が定まりやすいため、作業手順書やマニュアル整備との相性が抜群です。特に中小企業では属人化が進みやすいので、以下のようなステップを踏むと効果的です。
- 現状の工程を洗い出す(業務一覧表やヒアリング活用)
- 手順をステップ化(誰が見ても理解できるよう図解・画像を用いる)
- チェックリスト を導入し、ミス防止策を講じる
- マニュアル(全体の流れ・注意点) と 作業手順書(工程ごとの詳細) を使い分ける
(3) 平準化で稼働を安定化
定型業務は、月末・週末など特定のタイミングに集中しがちです。第4回で取り上げた「平準化」の考え方を導入し、業務負荷のピークを分散させると残業削減や品質安定につながります。たとえば、経理処理を1度にまとめてやるのではなく、週次や日次で分割する、あるいは複数の担当者でローテーションを組み、属人化を防ぐ といったアプローチが挙げられます。
(4) デジタル化・ペーパーレス化
定型業務の中でも紙の書類や押印プロセスが多い分野(経理、総務、人事)では、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進で大きな時短とコスト削減が期待できます。具体的には電子署名サービス や オンライン請求書管理、クラウド会計ソフト などが代表的。特に中小企業で紙・FAX文化が根強い環境では、導入効果が顕著に出るでしょう。
3. 非定型業務における創造性と柔軟性の管理手法
非定型業務は、都度新しい判断や対応が求められるため、定型業務のように「全面自動化・標準化」するのは難しい領域です。むしろ、担当者の裁量や創造性 が成果を左右するケースが多いため、管理方法も異なってきます。
(1) 非定型業務の例
- 営業提案や顧客折衝:顧客ニーズが多様で、都度新しい提案内容を考える必要がある
- トラブル対応・クレーム処理:状況が都度異なり、判断力が不可欠
- 新規事業開発・商品企画:アイデア出しや市場調査など、決まった答えがない
(2) 情報共有とナレッジマネジメント
非定型業務でも、「過去に類似の対応をしたことがないか?」 や 「成功事例・失敗事例から学べるノウハウはないか?」 という視点は非常に重要です。
- ナレッジマネジメントを通じて過去事例を検索できるようにする
- 口頭伝承を避け、FAQやWikiなどで対応実績をドキュメント化
- 定期的なチームミーティングや朝会で「最近のトラブル・成功事例」を共有
こうした仕組みを整備すれば、非定型業務においてもある程度の「再利用可能な知恵」を蓄積でき、属人的リスクを軽減できます。
(3) チーム内コミュニケーションとリーダーシップ
非定型業務は、自動化やツール導入だけで解決できるとは限りません。判断が求められる場面が多いため、チームリーダーや管理職が現場メンバーと密にコミュニケーションを取り、適切な指示やサポートを行う体制が大切です。
- 定例ミーティングで進捗・課題共有:非定型作業は進捗が不透明になりやすいので、小まめにコミュニケーションを取る
- 意思決定プロセスを明確化:誰が最終判断を下すのか、合意形成までに必要なステップは何かを明示
- スキルアップ研修・相互フォロー:新しい対応が必要になった際にスムーズに学習できる仕組みを用意
(4) 創造性を伸ばすための自由度確保
一方、非定型業務には担当者の裁量や柔軟な発想が求められる場面が多いのも事実。細かい手順書や厳格なルールでがんじがらめにすると、創造力が阻害される 可能性があります。中小企業のメリットとして、上層部との距離が近く、即断即決や柔軟な試行錯誤がしやすい点が挙げられます。
- 最低限のガイドラインのみ設定 し、具体的な手順は各担当者の裁量に任せる
- 成功・失敗に対する積極的なフィードバック文化 を育てる(失敗したら学びを共有する)
4. プロジェクト業務の進め方|特徴と成功の秘訣
プロジェクト業務は、定型でも非定型でもない「期間限定の特別タスク」という位置づけです。新製品開発や大規模リニューアル、システム導入など、一度きりの大きな目標を設定し、達成すればプロジェクトは終了する形です。
(1) プロジェクト業務の特徴
- 期限とスコープが明確:いつまでに何を達成するかが明確化されている
- チーム編成が一時的:部署を横断し、必要なスキルを持つメンバーが集まる
- リスク管理・スケジュール管理が重要:進捗が遅れると納期に影響しやすい
- 成果物が完成後、通常業務に戻る:終了時点で体制が解散することも多い
(2) プロジェクトマネジメント手法の活用
プロジェクトは大きな成果を狙える反面、失敗すると組織全体に影響が大きいため、プロジェクトマネジメント手法(PMBOK、アジャイル、Scrum など) を取り入れるのが効果的です。中小企業の場合、以下のポイントが重要となります。
- WBS(Work Breakdown Structure)の作成:タスクを細分化して可視化し、担当者と期限を明記。
- 進捗管理ツール:Trello、Asana、Backlogなどを使い、タスクのステータスや優先度を全員が把握できるようにする。
- リスク管理表:起こりうるリスクを洗い出し、回避策や発生時の対処法を事前に決めておく。
- 定例ミーティングとレポート:プロジェクト期間中は進捗共有を頻繁に行い、問題が早期発見できるようにする。
(3) プロジェクト後の振り返りとナレッジ継承
プロジェクトは成果物を完成させて終わりではなく、その過程で得た学びを組織に蓄積 することも重要です。特に中小企業では、プロジェクト終了後にメンバーが離職や異動をするとノウハウが失われてしまいがちなので、「プロジェクト後の振り返り会」 を行い、成功要因・失敗要因・改善ポイントをドキュメント化し、ナレッジマネジメントシステムやWikiに保管すると良いでしょう。
5. 成功事例|定型・非定型・プロジェクトを使い分けた改善例
ここでは、中小企業が定型・非定型・プロジェクトそれぞれの業務特性を見極め、効率化に成功した例を紹介します。
事例1:経理部門での定型業務自動化と負荷分散
- 背景:経理業務が「月末処理+給与計算」で常に残業が多く、ミスも多発。属人化が深刻だった。
- 対応策:
- 定型業務の洗い出し(支払処理、請求書発行、給与計算など)
- SaaSツール導入+手順書整備により、手入力や二重チェックを大幅に自動化
- 平準化の考え方を導入し、週次処理を増やして月末に集中しないよう調整
- 成果:
- 残業が月10時間以上削減
- ミス件数が約60%減少
- 経理担当者が月末ストレスから解放され、分析業務やアドバイザリー業務へ時間を回せるように
事例2:営業部門の非定型業務をナレッジ共有化
- 背景:営業メンバーそれぞれが個人のやり方で提案書を作成しており、成功事例・失敗事例が担当者の頭にのみ存在。新人育成が難しく、クオリティやスピードにばらつきがあった。
- 対応策:
- 営業ヒアリングを実施し、よくある顧客ニーズや提案パターンをWiki化
- 成功した提案書のサンプルやトークスクリプトを共有フォルダで管理
- チーム朝会で「最近成功した提案・失敗した提案」を共有し、フィードバックをナレッジベースに反映
- 成果:
- 新人でも一定レベルの提案書が短時間で作れるように
- 提案成立率が平均20%ほど向上
- 経験豊富なベテランも、他メンバーの事例から学べる機会が増え、全体の営業スキルアップにつながった
事例3:新店舗オープンプロジェクトでの全社協力体制
- 背景:中小の飲食チェーンが新店舗オープンを計画。限られた人員で複数店舗を同時展開するプロジェクトとなり、現場負担とリスクが高かった。
- 対応策:
- プロジェクトチーム編成(店舗運営リーダー、人事担当、マーケ担当などを集める)
- WBS作成と進捗管理ツール(Asana)導入で、タスク・スケジュール・担当を可視化
- 定型業務(備品発注、求人手配など)は平準化とRPA活用で負荷分散
- 新店舗独自のサービス企画(非定型業務)は週1回のブレインストーミングでアイデアをまとめ、ナレッジ化
- 成果:
- 計画的にプロジェクトが進捗し、予定通りオープン成功
- 新人スタッフの教育はマニュアル+OJT連携でスムーズ化
- 店舗オープン後のフォローアップを強化し、顧客満足度向上に寄与
- 次のプロジェクト(2号店オープン)も同じフレームワークを再利用でき、短期間で準備を整えられた
まとめ
中小企業が業務全体を最適化するうえで、「定型業務」「非定型業務」「プロジェクト業務」 の違いを意識することは非常に重要です。定型業務は自動化・標準化の余地が大きく、ミスや時間ロスを削減する好機があります。一方で、非定型業務は担当者の創造性や判断力がカギとなるため、情報共有やマニュアル化、コミュニケーション体制の整備が欠かせません。さらに、プロジェクト業務は期間限定のゴール設定が特徴であり、プロジェクトマネジメント手法を活用することで成功確率を高められます。
自社内の業務を正しく分類し、効率化の手法を使い分けることで、属人化やムダ、ミスを大幅に低減できるだけでなく、「付加価値の高い仕事」 に人材を配置しやすくなります。これは中小企業にとって、限られたリソースで最大効果を狙う 上で非常に有効なアプローチです。また、これまで本シリーズで紹介してきた業務一覧表、作業手順書、ナレッジマネジメント、マネジメントサイクルなどとも連動させれば、定型業務の最適化から非定型業務の質向上、プロジェクトの成功に至るまで、幅広い改善効果が見込めるでしょう。
次回は、「見える化のデメリットとは|取り組みの基本と注意点」をテーマに、よく語られる「見える化」の利点だけでなく、その裏に潜むデメリットや取り組む際の注意点を深掘りします。定型業務、非定型業務、プロジェクト管理でも「見える化」は役立ちますが、やりすぎや情報過多などが混乱を招くリスクもあるため、正しい使い方を学んでいきましょう。
もし、定型業務の自動化や非定型業務の管理、プロジェクト運営などに課題を感じている場合は、エスポイントまでお気軽にご相談ください。 それぞれの業務形態に合わせた効率化ノウハウやツール導入支援、プロジェクトマネジメントの導入サポートを通じて、貴社の業務最適化をトータルにバックアップいたします。
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補足コンテンツ(テンプレート・チェックリスト)
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業務分類テンプレート
→ 自社の業務を「定型業務」「非定型業務」「プロジェクト業務」に分けて整理できるシート。担当者、頻度、必要スキルなどを併記し、改善余地を検討しやすい形にまとめられます。 -
プロジェクト管理WBSサンプル
→ プロジェクトのタスク一覧や依存関係を可視化するWBS(Work Breakdown Structure)のサンプルフォーマット。小規模から中規模のプロジェクトまで幅広く利用でき、タスク担当と期限を明確にするのに役立ちます。
*テンプレートのPDF内にGoogle Spreadsheetのリンクがあります。適宜コピーの上ご活用ください。