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第2回:事業再生を目指す際の経営者の心構え

第2回事業再生を目指す際の経営者の心構え

事業再生を成功させるには、経営者の覚悟と的確な判断が欠かせません。本記事では、再生のカギとなるリーダーシップや財務管理、社内改革、金融機関との連携など、経営者が持つべき視点と具体的な行動を解説します。


想定読者

  • 資金繰りや債務返済に課題を抱え、事業の立て直しを検討している経営者
  • 売上減少やコスト増加により、抜本的な経営改善を図りたい財務責任者
  • 事業再生の具体的なプロセスや成功事例を学びたい中小企業の幹部

この記事のゴール

  • 事業再生を成功させるための経営者の心構えとリーダーシップの重要性を理解する
  • 財務状況の正確な把握と資金繰り改善の具体的な手法を学ぶ
  • 社内改革や専門家・金融機関との連携方法を実践的に知る

目次


1. 経営者の役割と再生成功のポイント

事業再生の成否は、経営者のリーダーシップに大きく左右されます。企業を立て直すには「絶対に成功させるんだ!」という強い覚悟を持ち、社員一丸となって取り組むことが重要です。そのためには、経営者自らが変革の旗振り役となり、社員の意識を「再生」という方向へ揃えていかなければなりません。現状の延長線上には再建はないと肝に銘じ、従来のやり方や聖域にメスを入れる覚悟が求められます。

加えて、経営者は自社の問題点を客観的に見極め、解決策を示すことが不可欠です。事業再生を担うリーダーに最も重要な能力として「問題点を的確に把握・解決し、新たなビジョンを確実に実行できること」を挙げられます。再生のビジョン(構想)を明確に描き、それを実行に移すリーダーシップこそが再建への道を切り拓きます。


2. 財務状況の正確な把握

再生への第一歩は、自社の財務状況を正確に把握することです。とりわけキャッシュフロー(資金繰り)は企業の「生命線」であり、資金が尽きれば即座に事業継続が困難になります。極端な例ですが、赤字企業でも手元資金さえ潤沢であれば倒産しませんが、黒字企業でも資金繰りが詰まれば倒産し得ます。そのため、経営が危機的状況にある場合には、損益計算書上の利益よりも現預金の動きに着目し、まず資金繰りを最優先で管理する必要があります。

キャッシュフロー管理の重要性: 事業再生局面では、まず会社の資金繰り予測を立て、「資金があとどれくらい持つのか」を明らかにしましょう。例えば、手元資金であと1〜2ヶ月しかもたない状況なのか、半年〜1年程度は耐えられるのかによって、講じるべき対策は大きく異なります。資金ショートまで猶予が少ない場合は、不採算部門の即時撤退や資産売却、金融機関へのリスケ(返済猶予)要請など緊急措置が必要です。一方、ある程度の猶予がある場合でも、資金繰り表を作成して毎月の入出金を細かく予測・管理し、支払いサイトの調整や在庫圧縮による現金確保など、資金が続くための手を尽くします。「資金が流れている限り企業は生き続けられます」という意識を持ち、現預金残高の把握と資金繰り改善策の実行を徹底しましょう。

財務分析の基本:損益計算書 (P/L) と貸借対照表 (B/S) のチェックポイント

企業の経営状態を把握するには、P/LとB/Sの両面から現状を分析することが欠かせません。それぞれの計算書類が示すポイントを整理すると次の通りです。

損益計算書のチェックポイント 貸借対照表のチェックポイント
売上高や粗利益は減少傾向にないか(収益悪化の兆候) 自己資本比率は低下していないか(財務基盤の弱体化)
人件費やその他固定費が売上に見合わず肥大化していないか 借入金など有利子負債が過大で返済負担が重すぎないか
営業利益・経常利益がマイナスに転落していないか 売掛金や在庫の増加により資金が滞留していないか
特別損失など一時的要因を除いて本業で黒字を確保できているか 資産の収益性は適正か(不要不急の資産が溜まっていないか)

上記のようなポイントを確認し、自社の問題が主に「収益性の低下(P/L面)」にあるのか「過剰債務など財務体質の悪化(B/S面)」にあるのかを見極めます。どちらに問題があるかによって再生策の方向性も変わります。例えば、収益性に課題がある場合はコスト削減や売上拡大策による利益改善が中心となりますが、財務面の問題(債務超過や資金繰り悪化)が深刻な場合は金融機関や債権者の協力を得て債務整理やリスケジュール等の対応が必要になるでしょう 。自社の財務状態を冷静に分析し、必要に応じて専門家の力も借りながら、適切な打ち手を検討することが大切です。

また、事業継続のための資金繰り対策も並行して検討・実行します。資金繰り改善策としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 不要不急の支出を停止し、固定費(人件費や家賃等)の削減交渉を行う。
  • 売掛金の回収条件を見直し、可能であれば早期回収やファクタリングの利用を検討する。
  • 過剰在庫がある場合はセール等で現金化し、在庫水準を適正化する。
  • 保有資産で遊休化しているもの(遊休不動産や使っていない設備)があれば売却し資金化する。
  • 金融機関に対しては早めに状況を説明し、追加融資や既存借入の条件緩和(返済猶予や減免)の相談を行う。

これらの対策を講じて資金繰りを安定させつつ、再生計画を実行するための最低限の「時間」を確保することが重要です。


3. 社内改革とチームビルディング

事業再生を成し遂げるには、社内の体制や風土を変革し、従業員が一丸となって再建に取り組める環境を整える必要があります。まず、現行の組織体制を見直し、再生に向けた柔軟で機動的な組織へと再編することが考えられます。大企業のみならず中小企業でも、部署やセクションの縦割り体制やセクショナリズムが意思決定のスピードを阻害していないか点検しましょう。必要に応じて部門の統廃合や組織のフラット化を行い、経営者から現場まで情報と方針が迅速に行き渡る体制を構築します。自社に重要課題ごとに社内横断チームを設けるなど、組織の垣根を超えた協力体制づくりが有効です。

従業員のモチベーション維持と協力体制の構築: 組織改革と並行して、従業員の士気を維持し協力を得るための働きかけも欠かせません。経営陣は現状を正直に伝えつつ、将来のビジョンや再生後の姿を示して、従業員に「この会社を良くしよう」という前向きな目標を共有することが重要です。社内コミュニケーションを活発にし、現場の意見や提案を募る場を設ければ、従業員が当事者意識を持って再生に参加するきっかけになります。また、小さなことで構いませんので改善の成果(経費削減の達成や品質向上によるクレーム減少など)を社内で共有し合い、努力が結果につながっていることを実感できるようにすることもモチベーション向上につながります。経営危機の際には従業員も不安を感じるものです。だからこそ丁寧な説明と対話を重ね、現場の声に耳を傾けながら「この会社で働き続けたい」と思ってもらえる信頼関係を築きましょう。

役員・管理職の責任と役割: 事業再生では経営トップだけでなく、役員や各部門の管理職がそれぞれ明確な責任を担い、リーダーシップを発揮する必要があります。経営幹部は自らの報酬カットや資産提供など痛みを分かち合う覚悟を示し、率先して再建策を実行する姿勢が求められます。再生計画における担当領域(例:財務リストラ、人員再配置、営業立て直し等)を明確にし、進捗に対して責任を負う体制を作りましょう。必要であれば、再建の障害となり得る慣習や人材について思い切った見直しを行うことも検討します。社内では「役員・管理職自らが本気で会社を変えようとしている」というメッセージを行動で示すことが重要です。経営層自らが具体的な改革プロジェクトを牽引することで、現場にも危機感と改革意識が浸透しやすくなります。


4. 専門家との連携と支援活用

自社だけの力で事業再生を成し遂げることが難しい場合、早めに外部の専門家や支援機関の力を借りることも検討すべきです。顧問税理士・公認会計士・弁護士の活用については、既に顧問契約している専門家がいれば積極的に相談しましょう。税理士や会計士は財務面の分析や経営改善計画の策定に、弁護士は債権者対応や法的整理の検討において強力な助言者となります。特に金融機関との交渉や法的手続き(私的整理や法的整理)に踏み切る場合、専門家のサポートなしに進めることは困難です。経営者は問題をオープンに開示し、専門家と二人三脚で再生への道筋を描きましょう。

公的支援策も積極的に活用すべきです。各都道府県には中小企業活性化協議会(旧・中小企業再生支援協議会)と呼ばれる公的機関が設置されており、中小企業の事業再生や経営改善を支援しています。中小企業活性化協議会は産業競争力強化法に基づき設置された機関で、専門家チームが中心となって企業の収益力改善から再チャレンジ(再生手続含む)まで幅広く支援してくれます。具体的には、無料の経営相談をはじめ、再生計画策定のアドバイス、金融機関との調整支援などを行っており、必要に応じて弁護士・会計士・中小企業診断士などの第三者支援専門家を派遣してくれます。協議会を通じた再生スキーム(私的整理手続き)は、裁判所を介さない柔軟な債務整理の枠組みとして、多くの中小企業の再建に活用されています。自社だけでは金融機関との調整が難しい場合でも、協議会が間に入ることで円滑に交渉が進んだ例も数多く報告されています。

その他にも、商工会議所や中小企業支援機関(独立行政法人中小企業基盤整備機構など)が提供する再生支援策があります。例えば、中小企業活性化協議会では「早期経営改善計画策定支援」や「経営改善計画策定支援」といった公的支援事業を通じ、認定支援機関の専門家が計画策定をサポートしてくれる制度があります (中小企業活性化全国本部 | 支援機関の方へ | 独立行政法人 中小企業基盤整備機構)。これら公的支援は国の補助事業として低コスト(場合によっては無料)で専門家の力を借りられるため、積極的に利用するとよいでしょう。

金融機関との関係構築についても、専門家の助言を得ながら進めていくことが望ましいです。金融機関は事業再生の重要なステークホルダーであり、再生計画の策定や実行に協力を仰ぐ場面も出てきます。日頃からメインバンクとは密なコミュニケーションを取り、経営に問題が生じた際には早期に相談しましょう。自社のみで対応が難しい場合でも、前述の協議会や顧問弁護士を通じて金融機関との話し合いの場を設けることも可能です。大切なのは、金融機関側に「この会社を支援すれば再建の見込みが高い」と感じてもらうことです。そのためにもしっかりとした再生計画を提示し、経営者自身が本気で再生を成し遂げる姿勢を示す必要があります。専門家の知見を借りながら金融機関と建設的な関係を築いていきましょう。


5. 再生プロセスでのコミュニケーション戦略

事業再生プロセスでは、社内外への適切な情報共有とコミュニケーション戦略が欠かせません。再建に向けた施策を実行する中で、従業員や取引先、金融機関などステークホルダーとの信頼関係を維持・強化することが、円滑な再生の鍵となります。

社内への情報共有: 従業員に対しては、経営の現状と再生計画を可能な限り開示し、危機感と方向性を共有することが重要です。会社が厳しい状況にあることを隠したままではデマや不安が広がり、士気の低下を招きます。一方で、再生の見通しやビジョンを示し「この計画で必ず会社を立て直す」という経営陣の決意と具体策を伝えることで、従業員も安心感を持てます。透明性の高い経営は社員の信頼を得る上で効果的であり、給与テーブルや損益計算書の情報をオープンにすることで従業員との信頼関係が築かれ協力を得やすくなるとの指摘もあります。無論、開示する情報の範囲やタイミングには配慮が必要ですが、少なくとも従業員を「置き去り」にせず、再建に向けた仲間として扱う姿勢が大切です。

取引先との関係構築: 仕入先や販売先など主要な取引先にも、必要に応じて経営状況や再生計画を説明し、協力を仰ぐことが求められます。取引先にとっても急な取引停止や債権回収不能(貸倒れ)は避けたい事態です。経営が悪化している場合でも、こちらから早めに事情を説明し、支払い条件の見直し(支払期限の延長や分割払い等)をお願いすることで、取引継続の道が開けることもあります。誠意を持って説明し、将来的に取引を継続・拡大していく意思と具体的な再建策を示せば、取引先も協力してくれる可能性が高まります。逆に、何の連絡もなく支払遅延などが発生すれば信用不安を招き、取引停止や与信圧縮(新規取引の現金前払い要求等)につながりかねません。苦しい状況だからこそ、取引先ほど丁寧にコミュニケーションを取り、信頼を維持する努力をしましょう。

金融機関との信頼関係構築: 金融機関に対しても、情報開示と誠意ある対応が不可欠です。金融機関は自社の資金繰りを支えるパートナーであり、再生計画に協力してもらうには信頼関係が前提となります。日頃から月次試算表や資金繰り表を提出して経営状況を共有し、経営に問題が生じた際には早めに融資担当者に相談しましょう。「悪い情報ほど早く伝える」ことを心掛け、リスケジュール(一時的な元本据え置き等)や追加融資など支援が必要な場合は、できるだけ早期に依頼します。金融機関も債権者ではありますが、敵対する相手ではありません。むしろ、中小企業の事業再生等に関するガイドラインでも示されているように、債務者(企業)と債権者(金融機関)が共通の認識の下で一体となって再生に向けた取組みを進めていくことが重要です。そのため、金融機関には自社の再建可能性や具体策を真摯に説明し、「一緒に再建を成し遂げたい」という姿勢で信頼関係を築きましょう。経営改善計画を提出し、それに基づき着実に業績改善・返済を実行していけば、金融機関からの信頼も次第に高まっていきます。

ステークホルダーとの交渉ポイント: 再生過程では、場合によっては債権者や株主、取引先など利害関係者との交渉が避けられません。その際のポイントは、「相手の立場にも配慮しつつWin-Winの解決策を探る」ことです。金融機関との交渉では、新たな融資や既存債務のリスケ・減免をお願いする立場になりますが、そのお願いに見合うだけの再生計画の合理性や担保条件の提示が必要です。また、自社だけでなく金融機関も将来的なメリット(貸倒れ回避や取引継続による利益確保)が得られることを示すことが重要でしょう。株主に対しては、増資の要請や債務の株式化(DES)などによる財務体質強化策を提案する場合もあります。その場合も、将来の企業価値向上によって株主にもリターンが及ぶことを丁寧に説明します。従業員との交渉(労使交渉)では、一時的な人件費削減(賞与カットや役員報酬カット等)が必要となるケースもありますが、「将来の雇用と会社存続を守るためのやむを得ない措置」であることを理解してもらうよう努め、同時に経営陣も痛みを分かち合う姿勢を見せます。いずれの場合も、一方的な犠牲や我慢を強いるのではなく、再生後に果実を分かち合える未来を提示しながら合意点を探ることが交渉成功のポイントです。


6. 再生に向けた実行計画と持続可能な戦略

短期・中長期の再生計画策定: 事業再生を成功させるには、明確な再生計画(アクションプラン)を策定し、それを確実に実行していくことが不可欠です。計画は短期の緊急対策と、中長期的な構造改革・成長戦略の二本立てで考えます。短期的には、まず資金繰りの安定と損益の早期黒字化に焦点を当て、コスト削減や資産売却など即効性のある施策を盛り込みます。一方、中長期的には、事業の収益モデルを見直し競争力を回復させる戦略(新商品の投入、事業ドメインの転換、業務プロセス改革など)を描きます。

再生計画は数値目標具体的施策をセットで示すことが重要です。例えば、「半年以内に営業キャッシュフローをプラス転換」「翌期に営業利益○○万円確保」といった目標に対して、どうやって達成するのか具体策を紐付けます。計画策定にあたっては、楽観的すぎる見通しは禁物で、市場環境や自社の実力を踏まえた現実的な数値を設定しましょう。また、計画は作って終わりではなく、進捗に応じて柔軟に見直す前提で策定します(ローリングプラン)。実際の業績が計画とかい離した場合は原因を分析し、計画をアップデートすることも必要です。

以下に、短期施策と中長期施策の例を簡単に示します。

短期の再生計画(例) 中長期の再生計画(例)
資金繰りの安定化:遊休資産の売却や在庫処分による現金確保、緊急融資の確保 収益性向上策:高付加価値商品の開発や新市場開拓による売上増加
コスト削減:固定費の圧縮(人件費見直し・役員報酬カット等)や変動費の削減 事業構造改革:不採算事業からの撤退と成長分野への経営資源集中
債務対応:金融機関への返済猶予(リスケ)の交渉やリファイナンス実施 財務基盤強化:資本増強(増資や社外からの出資)、債務圧縮による自己資本比率改善
短期KPIの設定:毎月の収支均衡ラインを明確化しモニタリング 長期ビジョンの提示:○年後の売上高・利益目標を掲げ、将来的なIPOや事業承継も見据える

このように短期と中長期の視点でやるべきことを整理し、ロードマップを描きます。再生計画を策定する際には、必要に応じて専門家の助言を受けることも有効です。中小企業活性化協議会などでは、認定支援機関の専門家とともに経営改善計画の策定を支援する公的制度が用意されています。これらを活用すれば、自社では見落としがちな課題の指摘や、金融機関が納得する計画書の作成に役立つでしょう。

再生後の成長戦略とビジョン: 事業再生はゴールではなく再スタートです。再生を成し遂げた後、持続的に成長していくための戦略とビジョンを描いておくことも重要となります。経営危機を乗り越えた企業は、いわば「第二創業」の段階に入ります。この機会に自社の強み・コアコンピタンスを改めて見極め、それを最大限に活かせる事業領域で成長を図りましょう。具体的には、新商品の開発や新サービス展開、成長市場への参入、他社との業務提携やM&Aによる事業拡大など、将来に向けた攻めの戦略を検討します。

再生直後はどうしても守りの姿勢(コスト削減や債務返済)に意識が向きがちですが、そのまま縮小均衡に陥っては将来展望が開けません。再建を果たしたタイミングで、従業員や取引先に対して「今後はこう成長していく」というビジョンをしっかり示すことで、社内外の期待感を高め、さらなる協力を得やすくなります。また、成長戦略を描くことは、再生計画で実施したリストラ策の痛みを和らげる効果もあります(将来への希望が見えるため)。経営者は再生後の会社のあるべき姿を示し、それに向けた中長期計画(新規投資計画や人材育成計画など)を策定・実行していく必要があります。

最後に、再生計画の実行段階ではPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を回し続ける意識が重要です。一度立てた計画であっても、状況の変化に応じて柔軟に手直しし、常に最適な打ち手を講じていく姿勢が求められます。経営改善の文化を会社に根付かせ、再生後も慢心せず健全な経営管理を継続することで、初めて持続可能な成長軌道に乗ることができるのです。

7. Q&A(よくある質問)

  • Q: 事業再生において経営者が最初に取り組むべきことは何ですか?
    A: 最初にやるべきことは、自社の現状を客観的に把握することです。特に、資金繰りの状況を正確に把握し、今後の資金繰り予測を立てることが急務です。どのくらい資金が持つのか(例えば「あと○ヶ月は耐えられる」のか「○ヶ月後には資金ショートする見込み」なのか)を明らかにし、それに応じて早急に手を打つ必要があります。加えて、損益計算書や貸借対照表を精査し、自社の抱える問題点(収益性の悪化なのか、財務状態の悪化なのか)を洗い出しましょう。その上で、専門家の助言も得ながら具体的な再生計画を策定していくことになります。

  • Q: 事業再生中に金融機関と良好な関係を維持する方法はありますか?
    A: 金融機関とは常に誠実にコミュニケーションを取り、信頼関係を維持することが大切です。具体的には、経営改善計画を策定して金融機関に提示し、理解と協力を求めましょう。計画に沿って業績改善に取り組み、返済スケジュールの遵守や進捗報告を怠らないことが信頼維持のポイントです。実際、策定した経営改善計画を取引金融機関に提出して同意を得た上で、具体的な返済計画を明示し、計画に基づいた返済を確実に実行することで金融機関からの信頼を得られた事例もあります 。大前提として、会社と金融機関が共通の目標に向かって一体となって再生に取り組む姿勢が重要です。業況が悪化した際にも決して金融機関への報告を怠らず、早め早めに相談・協議を行うことで、良好な関係を保ちながら必要な支援を引き出すことができます。

  • Q: どのタイミングで専門家に相談すべきでしょうか?
    A: 事業再生の必要性を感じたら、できるだけ早めに専門家に相談することをお勧めします。資金繰りに不安が出てきた、赤字が続いて自社だけでは打開策が見えない、といった段階が一つの目安です。多くの再生支援の専門家は「相談は早いに越したことはない」と口を揃えます。実際、収益を改善させ事業を再生させたい場合にはタイミングを逃さず、なるべく早めに事業再生のノウハウを持つ専門家(経営コンサルタントや再生支援機関)に相談することが望ましいとされています。問題が深刻化してからでは打てる手も限られてしまうため、少しでも危機の兆候を感じたら早期に動きましょう。

  • Q: 事業再生について従業員にはどのように説明すればよいですか?
    A: 従業員には、会社の現状と再生の必要性を率直に伝えることが基本です。ただし、不安を煽るだけでなく、同時に「必ず立て直す」という経営陣の決意と具体的な再生計画を示し、協力を呼びかけます。重要なのは従業員を単なる傍観者にさせず、当事者意識を持ってもらうことです。そのために、できる範囲で経営情報を開示し、現状を共有する姿勢が有効です。給与体系や損益状況などをオープンにすることで従業員との信頼関係が醸成され、協力が得られやすくなるという指摘もあります。もちろん、「会社が危ないから助けてほしい」だけでは従業員も戸惑います。そこで、「この再生計画で会社を良くするので一緒に乗り越えよう。そのために一時的に○○の協力をお願いしたい」といった形で、具体的な役割や見通しを示しながら説明すると良いでしょう。経営陣自身が身を切る覚悟(例えば経営者や役員の報酬カット等)も示せば、従業員もより納得感を持ちやすくなります。いずれにせよ、従業員も会社再建のパートナーであるという姿勢で、双方向のコミュニケーションを図ることが大切です。


8.まとめ

事業再生を成功させるためには、経営者自身の覚悟とリーダーシップが不可欠です。財務状況を正確に把握し、問題の本質を見極め、スピード感を持って適切な決断を下すことが求められます。また、従業員や金融機関、専門家との協力が重要で、「経営者だけが頑張る」のではなく、「チームとして再生に取り組む」姿勢を持つことが必要です。

再生はゴールではなく、新たな成長へのスタートラインです。再生計画の完遂と継続的な改善、未来を見据えた成長戦略の構築が、長期的な企業の発展につながります。危機を乗り越え、持続的な成長を目指すために、今こそ行動を起こしましょう。

次回は、「キャッシュフロー管理と金融機関対応」について解説します。事業再生において、資金繰りの安定は最優先事項です。具体的なキャッシュフローの管理方法や、金融機関との交渉のポイントについて詳しく見ていきます。

本シリーズの全体像や他の関連テーマについては、ぜひ【事業再生・廃業ガイド 記事シリーズ】をご覧ください。

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