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第6回:事業再生における専門家の役割
業績が悪化し事業再生(ターンアラウンド)を検討する際、経営者だけで解決するのは困難です。財務や法務にわたる高度な知識と経験が必要となるため、税理士・公認会計士、弁護士といった専門家の助言を受けながら進めることが推奨されます。専門家は客観的な視点で課題を分析し、適切な再生計画の策定から実行支援まで伴走します。また、公的支援機関や金融機関との橋渡し役も担い、利害関係者間の調整を円滑に進める潤滑油のような存在です。経営改善に向けた取り組みは、経営者と金融機関など債権者が共通の認識の下で一体となって進めることが重要であり、専門家の関与がその土台づくりに寄与します。
本記事では、事業再生に関与する主要な専門家の役割について解説します。まず財務のプロである税理士・会計士、続いて法務のプロである弁護士の果たす役割を見ていき、公的支援機関(中小企業活性化協議会等)の活用方法や金融機関との連携ポイントについて具体的に紹介します。
想定読者
- 経営不振に陥り、事業再生を検討している経営者や管理職
- 事業再生に関する専門家(税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士など)の活用方法を知りたい方
- 金融機関との交渉や公的支援を活用し、スムーズに事業再生を進めたい企業
- 法的手続きや財務管理に関する専門家の具体的な役割を知りたい経営者
この記事のゴール
- 事業再生に関わる専門家(税理士・会計士・弁護士・公的支援機関)の役割を理解し、自社の再生プロセスに適切に取り入れられるようになる
- 各専門家が提供する具体的な支援内容を把握し、どの段階でどの専門家の助言を活用すべきかを判断できるようになる
- 公的支援機関(中小企業活性化協議会など)の活用方法を知り、金融機関との交渉や債務整理をスムーズに進めるための選択肢を持てるようになる
- 事業再生の全体的な流れを理解し、適切な専門家と連携しながら再建計画を策定・実行できるようになる
目次
- 1. 税理士・会計士の役割(財務分析と改善提案)
- 2. 弁護士の役割(契約交渉・債務整理・法的手続の支援)
- 3. 公的支援機関の活用方法(中小企業活性化協議会等の支援フロー)
- 4. 金融機関との連携の重要性(専門家は橋渡し役)
- 5. Q&A:よくある質問
- 6. まとめ:事業再生を成功させるための専門家活用ポイント
1.税理士・会計士の役割(財務分析と改善提案)
事業再生の現場でまず重要になるのが、会社の財務状況を正確に把握し、再建に向けた具体的な改善策を示すことです。ここで中心的な役割を果たすのが税理士・公認会計士です。彼らは財務の専門家として、決算書や試算表を詳細に分析し、課題を洗い出します。例えば売上低迷や利益率の低下、過剰な借入金や不良資産の存在など、数字の裏にある問題点を客観的に指摘します。その上で、収益性向上やコスト削減のための具体策、資金繰り改善のプランを経営者に提案します。経営者にとって自社の弱点は見えづらいものですが、専門家の視点を借りることで初めて気づく改善余地も多いものです。
また、税理士・会計士はキャッシュフロー管理の支援も担います。資金がショートすれば事業継続は不可能になるため、現預金残高や入出金のタイミングを綿密に管理する必要があります。専門家は資金繰り表の作成をサポートし、将来数ヶ月~年単位の資金繰り予測を立てます。これにより、「いつまでにいくら資金が足りなくなるか」が明確になるため、早めに手を打つことが可能です。さらに融資のリスケジュール(返済条件の緩和)や追加資金調達が必要な場合には、金融機関への働きかけ方についてアドバイスします。借入金の返済猶予(元本据置期間の設定等)や新規融資・信用保証の活用など、銀行との交渉材料を準備するのも会計の専門家の得意分野です。
以下に、税理士・会計士が事業再生支援で提供する主な支援内容を整理します。
支援内容 | 具体的な内容 |
---|---|
財務分析・診断 | 損益や貸借の数値を客観分析し、問題点(赤字部門や過剰債務など)を明確化する |
経営改善提案 | 収益性向上のためのコスト削減策や不採算事業の整理、収益モデルの見直し等を提案する |
資金繰り管理支援 | 資金繰り表を作成し、将来の資金不足を予測。支払猶予など倒産を回避する資金管理策を助言する |
リスケジュール交渉支援 | 金融機関への返済条件変更(一定期間の元本返済猶予や減息)の提案書作成と交渉に向けた助言を行う |
資金調達アドバイス | 追加融資、政府系制度融資、補助金・助成金、私募債など必要資金を確保する手段を検討・提案する |
再生計画策定・モニタリング | 事業再生計画や経営改善計画の策定を支援し、計画実行後も定期的な業績チェックとフォローを行う |
このように、税理士・会計士は財務面のドクターとして現状を「見える化」し、具体的な改善策という処方箋を示してくれる存在です。特に中小企業では日々の業務に追われ資金管理がおろそかになりがちですが、専門家の関与によってキャッシュフロー経営を徹底し、無駄な出血(損失)を防ぐことができます。さらに、公認会計士や中小企業診断士の中には事業再生支援の専門家(ターンアラウンドマネージャー)として認定を受けている者も多く、金融機関と連携した計画策定に精通しています。こうした専門家を早期に起用することで、再生へのスタートを切る段階から的確な道筋を描けるでしょう。
2.弁護士の役割(契約交渉・債務整理・法的手続の支援)
事業再生では財務改善と並んで、契約や債務の調整といった法的課題への対応も避けて通れません。複数の金融機関から融資を受けている場合の債務整理の交渉や、取引先との契約見直し、場合によっては法的な手続きによる再建も視野に入ります。ここで活躍するのが弁護士です。弁護士は法律の専門家として、債権者との交渉戦略を立て、必要に応じて民事再生などの法的再生手続きの活用について助言します。
まず、私的整理(任意の債務整理)において弁護士が果たす役割を見てみましょう。私的整理とは、裁判所を使わずに債権者との合意によって債務の減免や返済猶予を行う手続きです。この場合、弁護士は会社側の代理人として金融機関や保証協会等と協議し、返済条件の変更や債務免除について合意形成を図ります。私的整理を円滑に進めるためには債権者全員の同意が必要であり、1社でも不同意の債権者がいると成立しません。弁護士は各債権者の利害を調整し、全会一致の合意を得られるよう粘り強く交渉します。また、必要に応じて第三者支援専門家(後述するガイドラインに基づく再生支援で選任される中立的な専門家)と連携し、債務者・債権者双方に受け入れ可能な再生計画の策定をサポートします。
次に、裁判所を利用した法的整理の場合です。代表的な法的整理手続きとして民事再生があります。民事再生手続は裁判所の下で債権者集会を開き、過半数の同意を得て債務免除等を行う再建型の手続きです。弁護士は申立書類の作成から裁判所や債権者対応まで一貫して支援し、法的保護の中で再生計画案を成立させるよう尽力します。民事再生の利点は、一部の債権者が反対しても多数決で再建計画を強制成立させられる点にあります。私的整理のように全員の合意を得る必要がないため、調整が難航する場合でも再建の道を開ける可能性があります。ただし手続きが公開情報となるため取引先に知られるリスクや、裁判所費用・時間がかかるデメリットもあります。一方、私的整理は非公開で進められるため手続きが公にならず信用低下を招きにくいメリットがあります。弁護士は会社の状況や債権者数・構成を踏まえ、私的整理と法的整理のどちらが適切かを判断して提案してくれます。場合によっては特定調停(簡易裁判所での調停手続を利用した私的整理スキーム)など、中小企業向けの簡便な手法を活用することもあります (特定調停スキーム利用の手引(改訂版)をご活用ください)。
さらに、弁護士は契約交渉や訴訟対応でも重要な役割を果たします。リストラに伴う人員整理や不採算事業からの撤退の際には労務トラブルが発生する可能性がありますし、取引基本契約の解約交渉や債権回収も発生し得ます。こうした場面で法的リスクをコントロールし円滑に事を進めるのが弁護士です。事業再生は単に数字を改善すれば終わりではなく、法的な権利義務関係を整理して初めて再建が完了します。倒産回避だけでなく、再生後のクリーンな事業スタートのために、弁護士の知見が不可欠なのです。
3.公的支援機関の活用方法(中小企業活性化協議会等の支援フロー)
国や自治体も、中小企業の事業再生を支援するための公的な枠組みを用意しています。その代表格が中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)です。中小企業活性化協議会は各都道府県に設置された公的機関で、商工会議所などが運営主体となり、中立公正な立場で中小企業の再生支援を行っています (中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援) | 中小企業庁)。専門家チームと金融機関、自治体等が連携し、地域ぐるみで企業の再建をサポートする体制が整えられており、収益力改善から事業再生、さらには廃業・再チャレンジまで幅広い局面で相談に乗ってくれます。
活性化協議会の支援の基本フローは次のとおりです。
図は典型的な再生支援の流れを示したものです(企業の実態調査から計画策定支援、債権者調整を経て、合意成立後はモニタリングへと進みます)。まず経営者からの相談を受けると、協議会のコーディネーターが現状をヒアリングし、課題の整理を行います。その上で再生可能性があると判断されれば、協議会内に個別支援チームが編成されます(第一次対応は無料相談、第二次対応から一部有料となります)。支援チームには必要に応じて外部専門家(弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士等)が加わり 、金融機関出身者や支援機関担当者と一緒に再生計画策定に取り組みます。協議会の支援内容は、企業の財務内容・事業内容の把握、事業計画の策定、金融支援策(リスケやDDS※など)の検討、債権者間の調整・合意形成、そして計画実行後のモニタリングまで多岐にわたります 。特に債権者間の合意形成では、協議会が間に入ることで金融機関同士の調整がスムーズになり、メインバンク以外も含めて足並みを揃えた支援が受けられるようになります。
(※DDS:Debt Debt Swapの略。銀行借入金の一部を劣後ローン等に振り替える手法で、実質債務免除に近い効果を持つ債務調整策の一つ)
協議会を活用する大きなメリットは、「第三者による客観的な再生計画」を提示できる点です。金融機関から見れば、企業と利害関係のない中立の専門家チームが作成・検証した計画であるため、計画の信頼性が高まります。その結果、追加融資や返済条件緩和など金融支援を引き出しやすくなるのです (ビジネスサポートデスク東京セントラル(資金・経営改善の無料相談) |東京商工会議所)。実際の支援事例でも、協議会の専門家の助言のもとで経営改善計画を策定し、それに基づき金融機関へ説明した結果、継続的な融資支援が決定したケースがあります。また協議会の支援は秘密厳守が徹底されており、金融機関など必要な関係者以外に企業の窮境が知られることはありません。社外への悪影響(風評被害)を最小限に抑えながら再建できる安心感は、公的機関ならではと言えます。
公的支援策としては他にも、2022年に策定された「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(いわゆる「中小版GL」)の活用があります。このガイドラインは金融庁・中小企業庁などが主導し、経営者保証ガイドラインの策定にも携わった専門家らによる研究会が取りまとめたもので、中小企業の平時から有事まで各段階における再生支援の方向性を示すとともに、新たな私的整理手続きの枠組みを定めたものです (「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」及び「中小企業活性化パッケージ」の公表について:金融庁)。ガイドラインに基づく私的整理手続きでは、第三者支援専門家(公認会計士や弁護士などから選任)を中心に据え、主要債権者全員の同意の下で事業再生計画を策定・実行します。特徴的なのは、手続開始時に主要債権者全員の合意を取り付けてからスタートするため、途中で不協和音が生じにくい点です。また、第三者支援専門家が計画の妥当性・実行可能性を調査しレポートを作成するなど、公正中立なチェックが入るため、金融機関も安心して債務免除等の踏み込んだ支援に応じやすくなります。実際、金融債務の減免を含む大胆な再生策であっても、ガイドライン手続ならば金融機関側が応じた例が出始めています。ガイドライン手続きは裁判所を使わないため費用も比較的低く抑えられ、かつ法的整理に近い網羅性・拘束力を持たせられる点で、中小企業にとって有力な選択肢となるでしょう(※ただし前述の通り全債権者の同意が前提となるため、同意が得られなければ手続終了となります。
公的支援を受ける際には、「費用負担はどれくらいか?」という点が気になるかもしれません。実は政府は中小企業の再生支援費用の一部を補助する制度を設けています。例えば、中小企業活性化協議会経由で認定支援機関(税理士・会計士など)の助言を受け本格的な経営改善計画を策定する場合、専門家費用の2/3を国が補助してくれます (中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援) | 中小企業庁)。このように公的枠組みを活用すれば、資金繰りが厳しい企業でも専門家支援を受けやすくなっています。まずは各都道府県の活性化協議会や商工会議所の企業相談窓口に問い合わせ、利用可能な支援策を確認してみると良いでしょう。
4.金融機関との連携の重要性(専門家は橋渡し役)
事業再生を成功させる上で、金融機関との良好な連携は欠かせません。銀行などの債権者は、資金繰り支援や債務免除といった再建の要となる決定権を握っています。したがって、金融機関の理解と協力を得られるかどうかが再生計画の成否を左右します。専門家はまさに企業と金融機関の橋渡し役として、双方のコミュニケーションを円滑にし信頼関係の再構築を促進します。
金融機関との交渉において重要なのは、経営者が自社の状況を正確に開示し、誠意を持って協力を仰ぐことです。しかしながら、経営者個人ではなかなか本音を債権者に伝えづらかったり、説得力ある再建策を示せなかったりする場合があります。そこを専門家がサポートします。例えば税理士・会計士は作成した財務分析や改善計画をもとに、銀行に対して「この計画なら御社の債権回収可能性も高まります」といった説明を行い、銀行側のメリットも含めて提案します。弁護士は法的選択肢も睨みつつ、「私的整理で合意できれば訴訟や法的手続より迅速に解決できます」と交渉し、金融機関に歩み寄りを促します。
金融機関との連携でポイントとなるのは次の点です。
- 信頼関係の再構築:過去に返済遅延や契約違反があった場合でも、再生プロセスでは誠実な情報開示とコミットメント(経営者自身の資産投入やコスト削減努力)を示すことで信頼回復に努めます。専門家が間に入ることで、銀行側も「第三者の目」が入っている安心感を持ち、企業の再建策を前向きに検討しやすくなります (中小企業事業再生等ガイドライン | 中小企業向け融資に関する相談窓口 | 一般社団法人 全国銀行協会)。
- 金融支援策の提案:専門家は銀行が受け入れやすい金融支援策を提案します。単に「返済を待ってください」ではなく、事業計画の中で○年後に○円返済できる見通しを示し、一定期間の元本据え置きやリスケに応じてもらう、といった具体策です。また必要に応じて信用保証協会の保証付融資や資本性ローンの活用など、公的支援策と組み合わせて銀行のリスクを下げる提案も行います。
- 債権者間調整:主要取引行のみならず複数の金融債権者がいる場合、各行の利害を調整し足並みを揃えることが重要です。専門家(協議会や第三者支援専門家)が調整役となり、債権者全員が共通の認識で再生計画に取り組める場を設定します (中小企業事業再生等ガイドライン | 中小企業向け融資に関する相談窓口 | 一般社団法人 全国銀行協会)。これにより、一部の金融機関だけが突出して不利にならないよう公平性を担保し、合意形成を促します。
- モニタリングとフォローアップ:金融機関に再生計画への協力を取り付けた後も、計画どおりの業績改善が達成されるかをウォッチし、必要に応じて計画修正や追加支援の相談を行うことが求められます。専門家は定期的に銀行に報告書を提出したり会議を持ったりして、現状報告と今後の対策を共有します。銀行側も専門家からの報告があることで安心して見守ることができ、計画逸脱時にも早めに軌道修正策を一緒に検討してもらえるでしょう。
事例として、ある企業では半年後に迫った借入金の返済に不安があったものの、専門家の支援で経営改善計画を策定し銀行に説明した結果、返済猶予と追加融資の継続支援を銀行から引き出せたケースがあります。このように、専門家を交えた誠実な交渉により金融機関との協調体制を築くことができれば、再生への道のりは大きく前進します。
5.Q&A:よくある質問
Q1. どのタイミングで専門家に相談すべき?遅すぎると手遅れになりますか?
A1. 事業再生は早めの着手が肝心です。業績悪化の兆候(連続赤字や資金繰り悪化)が見えた段階で、できるだけ早期に専門家へ相談することをお勧めします。多くの経営者は「もう少し頑張れば何とかなる」と先延ばしにしがちですが、それで状況が好転しない場合、時間の経過とともに選択肢が狭まってしまいます。専門家は経営者に代わって現状を客観評価し、必要なら痛みを伴う改革も含めて最適な再建策を提示してくれます。手遅れになる前に第三者の視点を入れることで、再生できる可能性が飛躍的に高まります。特に資金繰りが数ヶ月先まで危うい場合や、金融機関からリスケ要請がある場合は、一刻も早く相談しましょう。
Q2. 専門家や公的機関の支援には費用がかかりますか?資金がない中で依頼できるか不安です。
A2. 公的機関の相談窓口や中小企業活性化協議会の一次相談は無料で受けられます。本格的な再生支援(専門家チーム派遣など)に移行する場合でも、公的補助によって費用負担が軽減されます。例えば、経営改善計画の策定時には専門家費用の2/3を国が補助する制度があります。実質的に企業側の負担は1/3で済むため、資金繰りに余裕が無くとも支援を受けやすくなっています。また、金融機関によっては顧問弁護士・会計士による相談をアレンジしてくれる場合や、商工会議所の経営安定特別相談室(東京商工会議所などが設置)では無料で専門家の派遣助言を受けられる制度もあります。費用面が心配で相談を躊躇するよりも、まずは無料相談を活用し、その中で支援策・補助制度について説明を受けてみてください。
Q3. 協議会や第三者に相談すると、周囲に経営不振が知られて信用低下するのでは?
A3. 心配無用です。中小企業活性化協議会など公的支援機関では秘密厳守が徹底されています。相談内容や支援を受けている事実が取引先や従業員、世間に漏れることはありませんし、支援関与者以外には情報提供しないルールになっています。実際、協議会の支援は金融機関などの債権者以外には企業の窮状を知られずに進められ、風評による信用低下を回避しながら再建できた事例が多数あります。むしろ、経営改善に向け専門家や公的機関の力を借りることは、銀行から見れば「本気で再建に取り組んでいる」プラスの評価にもなります。事実、金融機関へのアンケートでも「経営者が活性化協議会など第三者と連携している場合、再生可能性を前向きに検討する」との回答が多くあります (「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」及び「中小企業活性化パッケージ」の公表について:金融庁)。周囲の目を気にして支援をためらうより、信頼できる公的機関に相談し、着実に再建への道筋をつける方が結果的に信用回復への近道となるでしょう。
Q4. 私的整理と民事再生ではどちらが良いのでしょうか?違いがよく分かりません。
A4. 一長一短があります。それぞれ概要と違いを整理すると以下の通りです。
- 私的整理:裁判所を介さず、金融機関など債権者との合意で債務整理を行う方法です。手続きが非公開で進むため、外部に知られず信用不安を招きにくいメリットがあります。費用も抑えられ、柔軟な再建策を当事者間で決められます。ただし全ての主要債権者の同意が必要で、1社でも反対すれば成立しません。したがって、主要取引銀行が協力的で利害調整が可能なケースに向いています。代表的な枠組みに「中小企業再生支援協議会(活性化協議会)スキーム」や「中小企業版事業再生ガイドラインによる手続き」「事業再生ADR」「特定調停による調整」などがあります。
- 民事再生:裁判所に申立てを行い、法的保護下で再建を図る手続きです。手続開始とともに債権者からの個別の強制執行等が停止され、債務のカットや返済猶予について多数決で決議します。反対債権者がいても過半数の同意で再生計画を強制的に成立させることができるため、大勢の債権者がいる場合や意見集約が困難な場合に有効です。ただし手続き開始は官報公告され公開情報となるため、取引先に知られるリスクはゼロではありません。また、弁護士費用や裁判所費用がかかり、手続期間も私的整理に比べ長めです。
総じて、主要債権者が金融機関中心で協調姿勢を持っているなら私的整理(公的機関やガイドラインの活用を含む)が望ましく、利害関係者が多岐にわたるか調整困難な場合には民事再生も選択肢になります。弁護士など専門家に相談すれば、自社の状況でどちらが現実的か適切にアドバイスしてもらえます。専門家は私的整理でまとまりそうか見極めつつ、難しければスピーディーに法的整理に切り替える段取りも提案してくれるでしょう。
Q5. 顧問の税理士や取引弁護士がいるのですが、事業再生もその人に任せれば良いでしょうか?
A5. 現在お付き合いのある税理士・弁護士が事業再生の経験をお持ちであれば、まずは相談されると良いでしょう。貴社の事情を理解している分、スピーディーに状況把握ができる利点があります。ただし、事業再生は通常の税務や法律業務と比べ専門性が高く、金融機関対応や事業計画策定のノウハウが求められます。そのため、場合によっては事業再生を専門とするコンサルタントや認定支援機関との協働を検討することも有益です。多くの場合、顧問税理士が中心となりつつ、外部の公認会計士や中小企業診断士、弁護士チームと合同で再生計画を作るケースが見られます。実際、中小企業活性化協議会の支援でも「顧問税理士+外部専門家」の連携で成功した事例があります。重要なのは、チームで取り組むことです。1人の専門家だけですべてを賄おうとせず、必要に応じて金融・財務・法務それぞれのプロフェッショナルを組み合わせて体制を組むのが、再生成功の近道となります。
6.まとめ:事業再生を成功させるための専門家活用ポイント
経営危機に陥った企業が再び立ち直るためには、適切な専門家の力を借りることが不可欠です。税理士・会計士は財務面の立て直しプランを示し、弁護士は法務面で安全網を張り、公的支援機関は関係者を束ねる場を提供してくれます。それぞれの専門家が持つ知見を活用しながら、金融機関をはじめとする関係者と二人三脚で進めることが、再生計画の実効性を高める鍵です。
特に中小企業の場合、第三者の視点を入れることで初めて見えてくる課題も多くあります。「会社を良くしたい」という熱意に、専門家の知恵と経験が加われば鬼に金棒です。早めの相談・早めの対策で時間を味方につけ、使える支援制度は積極的に利用しましょう。財務改善→債務調整→計画策定→実行・フォローという一連の流れの中で、タイミングごとに適切なプロに頼ることで、各ステップを確実に乗り越えることができます。
事業再生は決して楽な道のりではありません。しかし、頼れる専門家たちと共に綿密な計画を立て、一歩一歩実行に移していけば、必ずや再建への道は開けます。社長一人で抱え込まず、チームで再生に挑むという発想転換が成功への第一歩です。本記事で紹介したポイントを参考に、自社の再生シナリオを描いてみてください。専門家の力を最大限に引き出し、ぜひ再び持続的成長への歩みを進めましょう。専門家と二人三脚で挑む事業再生は、きっと会社にとって新たな未来への扉を開く契機となるはずです。
次回は、「事業再生に関するガイドラインと政策」について詳しく解説します。事業再生を進めるにあたり、公的支援制度や再生スキームを活用することは大きな助けになります。各種ガイドラインの活用方法や、政府・金融機関の再生支援策について整理し、具体的な活用事例とともにご紹介しますので、ぜひご覧ください。
本シリーズの全体像や他の関連テーマについては、ぜひ【事業再生・廃業ガイド 記事シリーズ】をご覧ください。
