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4.デューデリジェンス(企業精査)の重要性

デューデリジェンス(企業精査)の重要性

想定読者:M&A基本合意(LOI)締結後、企業調査やリスク把握を本格的に行いたい買い手経営陣・売り手対応担当者
ゴール:財務・法務・人事・IT・ESGなど多岐にわたるデューデリジェンス(DD)のポイントを把握し、M&A最終契約や価格設定に活かせるようになる

M&Aプロセスにおいて、デューデリジェンス(DD)は欠かすことのできない重要なステップです。これは、買い手が対象企業(売り手)の実態やリスクを正確に把握し、最終的な価格や契約条件を適切に設定するために実施する「企業精査」のことを指します。一方、売り手にとっても、DDは買い手の信頼を得て、交渉をスムーズに進めるための“透明性確保”の場でもあります。前回の記事(M&Aプロセスの具体的手順)で解説したように、NDA(秘密保持契約)LOI(基本合意書)までの段階をクリアすると、いよいよ買い手はより深いレベルの情報開示を要求し、売り手は自社の内部資料やデータを準備することになります。このフェーズでの企業精査は、M&A交渉の成否を左右する大きなポイントと言えるでしょう。

本記事では、DDがなぜ重要なのか、その目的や範囲、具体的な進め方について詳しく解説します。さらに、財務・法務・人事・IT・ESG(環境・社会・ガバナンス)など、DDの各分野ごとにどのようなチェックが必要なのかを取り上げるとともに、DDを実施する際の注意点やリスクマネジメントの方法についても述べていきます。

中小企業におけるM&Aでは、リソースが限られている中で効率的かつ正確なDDを行うことが求められます。ここでの取り組みが疎かになると、クロージング後に想定外のリスクが表面化し、PMI(Post Merger Integration)や企業価値向上が大幅に阻害される可能性があります。ぜひ、このプロセスをしっかり理解して、M&Aを成功へ導くための基盤を固めてください。


目次

  1. デューデリジェンス(DD)の目的と全体フロー
  2. ターゲット企業との接触と初期交渉
  3. NDA(秘密保持契約)の締結
  4. 基本合意書(LOI)の作成と条件の共有
  5. M&Aに必要な資金計画の立案
  6. まとめ

1. デューデリジェンス(DD)の目的と全体フロー

1-1. DDの主要目的

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リスクの顕在化と評価
企業内部に潜むリスクを早期に洗い出し、その影響度を評価します。

価格・条件交渉の根拠確立
DDで得た情報は、最終的な買収価格や契約条件の調整に直結します。

PMI計画への入力情報
DDで得られる詳細な情報は、クロージング後のPMI計画にも大きく影響します。

  • リスクの顕在化と評価
    DDの第一の目的は、企業内部に潜んでいるリスクを早期に洗い出し、その影響度を評価することです。財務リスク(不良債権や過大在庫など)や法務リスク(未解決の訴訟・契約書問題など)、労務リスク(未払残業代、社会保険未加入など)、ITリスク(システム老朽化、セキュリティ脆弱性)など、多岐にわたります。
    M&A後に想定外の問題が噴出すると、追加費用や時間的ロスが生じるだけでなく、買い手企業の評判にも悪影響が及ぶ可能性があります。DDを通じてリスクを可視化・定量化しておくことが不可欠です。

  • 価格・条件交渉の根拠確立
    DDで得た情報は、最終的な買収価格や契約条件の調整に直結します。たとえば、財務DDで多額の隠れ負債が判明した場合、買い手は買収額の引き下げや条件の変更を求めるでしょう。あるいは人事DDでキーパーソンが退職予定であることが発覚すれば、経営計画に修正が必要になり、価格面でも調整が起こるかもしれません。DDの結果は、売り手と買い手双方が「公正な取引」と納得するための重要なエビデンスとなります。

  • PMI計画(統合後経営)への入力情報
    DDで得られる詳細な情報は、クロージング後のPMI計画にも大きく影響します。組織統合やシステム連携、人事制度の統一などを行う際に、どの部分でギャップや問題が起きそうかを事前に把握し、適切な対策を盛り込むことができます。逆にDDが不十分だと、統合の段階で大きな障害に気づき、対応が後手に回る恐れがあります。

1-2. DD全体フローとタイムライン

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  1. LOI締結~DD準備
    NDAやLOIが交わされた後、買い手は具体的なDD計画を立案し、必要な専門家チームを編成します。売り手側も、開示資料の整理や社内説明の準備を進める段階です。

  2. 資料要求リスト(DDリスト)の提示
    買い手側またはFA・専門家が、売り手に対して「どのような資料や情報が欲しいか」をリストアップし、売り手は可能な限り提供します。ここで情報管理ルール(閲覧制限、持ち出し禁止など)を設定することも重要です。

  3. 資料レビューおよびヒアリング
    提示された資料を精査し、不明点や追加確認事項をヒアリングしたり、売り手企業の現地訪問や経営陣・現場担当者へのインタビューを実施することもあります。

  4. DD結果の分析と報告書作成
    各分野(財務、法務、人事、ITなど)の専門家がDD結果を報告書にまとめ、リスクや改善点の優先度を評価します。

  5. 交渉・契約条件の最終調整
    DDの結果に基づき、価格や譲渡条件、表明保証条項など最終契約の内容を詰め、必要なら合意内容の変更を行います。

  6. DD終了後、最終契約へ
    DDで問題が解消されない場合は交渉決裂もあり得ますが、合意に至れば売買契約書(SPA)の締結やクロージングの準備を進めていきます。

DDの期間は案件規模や分野の複雑さによって異なりますが、小規模案件でも数週間~1か月、大型案件では数か月以上かけて実施されることがあります。中小企業の場合、財務・法務・人事など限定的な範囲で集中的に行うケースもあれば、事業規模の割に複雑なリスクが内在しており、入念な精査が必要になるケースも存在します。


2. 財務デューデリジェンスのポイント

2-1. 財務DDの意義

財務DDは、「対象企業の財務状況がどれだけ正確に把握できるか」を重視するプロセスです。売り上げや利益、資産負債の構成が公表されている決算書通りなのか、あるいは隠れ負債や過大在庫が潜んでいないかを徹底的にチェックします。

  • 正確な企業価値評価に役立つ
    企業価値を算定するうえで、過去の財務実績や現状の利益水準がどれだけ信頼できるかは大きなファクターです。粉飾決算や実態より過小に報告しているケース(いわゆる「意図的損失隠し」など)を見破るためにも、財務DDは欠かせません。

  • 将来のキャッシュフロー予測を補強
    過去の決算書だけでなく、主要取引先の売掛金の回収状況や在庫回転期間などを確認することで、将来的なキャッシュフローをより正確にシミュレートできます。M&A後の資金繰りや投資計画に大きく関わるため、財務DDで得た知見は買い手の経営戦略に直結します。

2-2. チェック項目例

  • 貸借対照表(B/S)の精査

    • 棚卸資産・在庫: 過剰在庫や不良在庫が含まれていないか。
    • 固定資産: 減価償却が適切に行われているか、簿価と実勢価格に乖離がないか。
    • 負債: 短期・長期借入金の金利や返済条件、リース債務やオフバランス債務などの有無。
  • 損益計算書(P/L)の精査

    • 売上・利益水準の変動要因: 特定の大口顧客に依存していないか。季節要因やイベント売上が大部分を占めていないか。
    • 経費・コスト構造: 労務費や材料費などが適切に計上されているか。役員報酬や一時的な費用(非経常損益)が大きく影響していないか。
  • キャッシュフロー関連

    • 売掛金・買掛金の回収・支払いサイト: 極端に長いサイトによって資金繰りが逼迫していないか。
    • 設備投資計画: 今後大規模な設備更新が必要になる可能性、ローン返済スケジュールとの兼ね合い。

2-3. 注意点

  • 中小企業特有の“オーナー関連費用”
    中小企業では、オーナー個人の車両費や家族給与など、会社経費として不透明に処理している場合があります。買い手としては、それらを精査し、実質的な事業コストを再計算する必要があります。
  • 金融機関の格付け状況
    銀行からの借入金利が低い理由が、経営者個人の保証や土地担保によるものだった場合、経営者が退任すると金利優遇を受けられなくなる可能性があるため要注意です。

3. 法務・契約面でのリスク分析

3-1. 法務DDの重要性

法務DDは、企業が結んでいる各種契約(取引基本契約、業務委託契約、ライセンス契約など)やコンプライアンス体制、過去・現在進行中の訴訟リスクなどを点検し、法的なリスクを洗い出すプロセスです。中小企業では契約書が整備されていないケースや、口頭合意で長年取引してきた事例もあり、より慎重な確認が求められます。

3-2. 主なチェック項目

  • 主要契約書の有無と内容
    売り手企業が取り交わしている大口取引先との契約が文書化されているか、不利な条項が含まれていないか。また、有効期限や解除条件がどう設定されているかを確認します。
  • ライセンスや権利関係
    特許・商標・著作権などの知的財産権がどのように管理されているか。第三者との権利紛争が潜在的に起きるリスクはないか。
  • 過去・現在の訴訟やトラブル履歴
    労働問題(残業代未払訴訟、パワハラ訴訟など)、製品クレーム・欠陥、取引先からの債権回収トラブルなど。解決済みでも将来の再燃リスクがないかをチェックします。

3-3. 中小企業ならではの留意点

  • 口頭合意や社内規定不足
    長年の慣行で契約書なしに取引をしている場合、買い手からすると非常に不安材料となります。口頭合意が突然破棄される可能性や、そもそも契約内容が曖昧だと、M&A後に取引条件が変わる恐れがあります。
  • 代表者個人保証の扱い
    多くの中小企業では、銀行借入やリース契約に代表者の個人保証が設定されていることがあります。M&A後の経営体制変更で、個人保証の解除や再設定が必要になる場合があるため、交渉時に留意しましょう。

4. 人事や組織文化の適合性チェック

ma004-24-1. 人事DDの背景

中小企業のM&Aでは、「人」が企業価値の大部分を占めることがあります。特に職人技や高度なノウハウを持つ専門人材がいる場合、その人たちのモチベーションや雇用継続意欲が低下すると、M&Aのメリットが一気に失われかねません。人事DDでは、従業員データや労務管理状況、社内規定などを深掘りし、組織文化の融合可能性も探ります。

4-2. 主なチェック項目

  • 従業員構成・労務管理
    • 従業員の年齢・勤続年数・給与テーブルなどの構成を把握し、将来的な退職リスクや昇給コストを評価します。
    • 社会保険や労働保険の加入状況、残業代の支払い実態などを確認し、労務トラブルが潜在化していないかを洗い出します。
  • キーパーソンの存在と退職リスク
    • 経営幹部や技術の要となるキーパーソンが退職を検討していないか、M&A後も残留する意思はあるか、契約やインセンティブプランでどこまで縛れるのかを確認します。
    • 仮に辞めてしまうと事業が回らなくなるリスクが高い人材を、どう評価し、どのような引き留め策を取るかも検討する必要があります。
  • 組織文化・社風の差異
    • 買い手企業と売り手企業で、意思決定のスピードやコミュニケーション様式、福利厚生の充実度など、社風が大きく違うとPMI時にトラブルが起きやすくなります。
    • 人事制度や評価体制を統合する計画がある場合、その手間やコストも事前に織り込む必要があります。

4-3. 組織文化統合のシミュレーション

  • インタビューやアンケート
    M&A前にキーパーソンや管理職へ簡単なインタビューを実施し、会社への愛着や仕事へのモチベーションを探る方法があります。必要に応じて従業員アンケートを行い、組織風土を数値化する企業もあります。
  • PMIチームの編成
    人事DDを踏まえ、M&A後に組織統合を担当するPMIチーム(人事部門、経営企画部門など)を事前に組成し、具体的なアクションプランを準備しておくとスムーズに移行できます。

5. IT・システム面での課題洗い出し

5-1. ITデューデリジェンスの重要性

現代の企業経営において、ITシステムやデジタル基盤が果たす役割は大きく、特にシステム連携やデータ活用がM&A後の競争力向上に直結する場合が少なくありません。逆に、老朽化したシステムや不十分なセキュリティ対策が見つかると、買い手企業は想定外の追加投資やリスクを負うことになり、交渉に影響が出るでしょう。

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基幹システムと周辺システム
老朽化状況やメンテナンス状態を確認します。

セキュリティ対策
ウイルス対策やアクセス権限管理を点検します。

データ連携・インフラ統合容易性
買い手企業のシステムとの統合可能性を評価します。

5-2. チェック項目

  • 基幹システムと周辺システム
    • 財務会計システム、販売管理システム、在庫管理システムなどが、どれほど老朽化しているか、メンテナンス状況はどうかを確認します。
    • オンプレミス(自社サーバ)で運用している場合、ハードウェアの寿命や災害対策にも留意が必要です。一方、クラウドサービス利用時には契約・料金体系の確認を行います。
  • セキュリティ対策
    • ウイルス対策やファイアウォール、アクセス権限管理など、基本的なITセキュリティが施されているかを点検します。個人情報や顧客データを扱う場合、セキュリティレベルが低いと情報流出リスクが高まります。
  • データ連携・インフラの統合容易性
    • 買い手企業のITシステムと、売り手企業のシステムをどのように統合するかによって、開発コストが大きく変わります。APIやデータベース構造が大きく異なると、連携に時間と費用がかかるでしょう。

5-3. 将来コストと投資見込み

  • システム更新費用の試算
    老朽化したITインフラを一新する場合、数百万円~数千万円かかることもあります。それをM&A後に買い手が一気に負担するのか、あらかじめ価格交渉に織り込むのか、戦略的な検討が必要です。
  • IT人材の確保
    中小企業ではIT担当が一人しかいない、あるいは外注に頼っているケースも多々あります。人材確保が困難なエリアだと、システム保守に支障が出ないかをよく確認しておきましょう。

6. 環境や社会的リスクの検討(ESG視点)

6-1. ESG要素の高まり

近年、ESG(Environment, Social, Governance)の観点が投資や企業評価で大きなウエイトを占めるようになっています。大企業だけでなく、中小企業も地元環境への配慮や社会的責任に対する取り組みが注目される時代です。買い手企業がESGに積極的であれば、売り手企業の環境リスクや社会的リスクをDDで確認し、ネガティブ要因がないか慎重に調べる可能性があります。

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環境負荷と法令遵守
排水、排ガス、産業廃棄物の処理状況を確認します。環境基準への適合性を重点的に評価します。
社会的責任・地域との関係
地域貢献活動や労働環境への配慮を評価します。持続可能な社会づくりへの取り組みを確認します。
買い手企業のESG方針との整合
ブランドイメージへの影響や将来の規制対応を検討します。長期的な企業価値向上の観点から評価を行います。

6-2. チェック項目

  • 環境負荷と法令遵守
    • 事業活動による排水、排ガス、産業廃棄物の処理など、環境関連法規に違反していないか。過去に行政指導や罰則を受けていないか。
    • 土壌汚染や化学物質管理が適正に行われているか。万一、土地汚染が見つかった場合、大きな修復コストがかかる可能性がある。
  • 社会的責任・地域コミュニティとの関係
    • 地元雇用や地域イベントへの参加など、社会的な取り組みを重視しているか。地域住民との関係が悪化していないか。
    • 人権や労働環境への配慮(ハラスメント防止策など)が整備されているか。

6-3. 買い手企業のESG方針との整合

  • ブランドイメージへの影響
    買い手がESGを経営方針の柱として掲げている場合、買収先の環境・社会面での評判が悪いと、企業価値やブランドに傷がつく可能性があります。
  • 将来の規制強化リスク
    SDGsやカーボンニュートラルなど、環境規制が強まっている潮流の中で、将来の法改正対応が必要になるかもしれません。その場合の投資コストを考慮する必要があります。

7. DD実施時の注意点とリスクマネジメント

7-1. 情報の取り扱いと秘密保持

DDでは多くの機密情報を扱うため、情報漏洩のリスクが常に伴います。買い手側は、自社と利害関係のある競合企業に情報が渡ることを懸念する場合もありますし、売り手側も自社のノウハウや顧客情報が流出するのを恐れます。NDAの徹底はもちろん、データルーム(クラウド上など)を活用してアクセス権限を制限し、閲覧ログを記録するなど、セキュリティ管理を強化することが必須です。

7-2. デューデリジェンスを効率化するポイント

  • 資料要求リストの明確化
    買い手側は「どの資料が必要か」を具体的にリストアップし、優先順位をつけて要求しないと、売り手側に膨大な資料作成負担を強いるだけで、要点が見えない状況に陥りがちです。小出しにするのではなく、一括で要求リストを提示したり、段階的にフォーカスを絞っていくアプローチが推奨されます。
  • 専門家・社内担当の連携
    会計士、弁護士、コンサルタントなどが各分野でDDを行う場合、情報交換と連絡体制を密にする必要があります。財務DDで気づいた問題が法務DDにも関連するといったケースは多々あるので、レポートをまとめる段階で重複や抜け漏れを防ぎ、総合的な結論を導く仕組みが大切です。
  • スケジュール管理
    中小企業では普段の業務との兼ね合いで、短期間に膨大な資料を作成・提供するのが難しいことがあります。あらかじめ一定の期間を設け、段階的にDDを進める計画を策定し、売り手の業務に過度の負担がかからないよう配慮しましょう。

7-3. DDの結果と交渉・契約の行方

  • 価格や条件変更の交渉
    DDで重大なリスクや負債が発覚した場合、買い手が価格引き下げや再交渉を求めるのは一般的です。それに対して売り手がどう対応するかで最終合意に至るか否かが決まります。
  • 表明保証条項でのリスク分担
    最終契約(SPA)には、売り手が「これこれの事項に問題はない」と保証する条項が含まれることが多いです。DDで確認できなかったリスクをどう分担するか、万が一後から問題が見つかった場合の補償はどうするか、これらも含めて売り手・買い手が合意を形成していきます。

まとめ

デューデリジェンス(DD)は、M&Aの成否を大きく左右するプロセスでありながら、最も労力と時間を要するステップでもあります。本記事で紹介した財務・法務・人事・IT・ESGなど、確認すべき領域は多岐にわたり、中小企業では資料の整備や専門家連携に手間取るケースが少なくありません。しかし、この段階を疎かにすると、後々に重大なリスクが発覚して交渉が破談になる、あるいはクロージング後に莫大な追加コストを負わざるを得なくなるなど、取り返しのつかない事態に陥る可能性があります。

DDは単なるリスク洗い出しだけでなく、最終価格や契約条件を適正化し、公正な取引を実現するための基盤でもあります。買い手がリスクに対して正当な価格調整を行うことや、売り手が自社の情報を誠実に開示して信頼を築くことは、M&A後の統合(PMI)を円滑に進めるためにも重要です。さらに、DDによって得られる詳細な企業情報は、PMI計画の立案にも活かされます。

特に中小企業の場合、オーナー経営者の個人保証や一部口頭合意など、慣習的な経営手法が残っていることも多いですが、M&Aを機にこれらを整理・開示することで、逆に企業としての透明性や改善余地を示せる好機でもあります。自社の魅力とリスクを正しく伝えることが、結果的に良好な交渉とWin-Winの合意を生み出す鍵となるでしょう。

次の記事では、「契約締結とクロージング」のプロセスに焦点を当て、DDの結果を踏まえて最終的な売買契約書を取り交わし、クロージング(取引完了)まで進める際の注意点や必要な手続き、行政許認可、PMI準備などを解説します。M&Aのゴールに近づくこのステップでも、多くの書類や法務面での確認事項があり、現場が混乱しがちです。しっかりとDDの成果を活かしながら、契約締結を円滑に行うポイントを把握してください。


本シリーズの全記事の概要や関連コンテンツは、中小企業事業承継・M&A総合ガイドページでご覧いただけます。企業戦略の一環としてのM&Aについてのポイントを見つけてください。一般企業のM&Aに加えて社会福祉法人M&Aに関する記事もご覧いただけます。

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